[頭巾 −現代ヴァージョン−]



「こんにちは、赤頭巾ちゃん。」

と、何だか油っぽくて臭い気がする男が話しかけてきました。
どう見ても、オタク。またはニートっぽいです。
赤頭巾と呼ばれた女の子、朱奈はその男を無視しました。
話しかけてくる妙な野郎にはお気をつけなさい、というのが
彼女の家の教えだったからです。
それに、朱奈は童話の赤頭巾のように無知ではありません。
赤頭巾と呼ばれた事にも、ムカッときたのでした。
童話関連を思い出すと、何故かルイス・キャロルが出てきます。
不思議の国のアリスの著者はロリコンとか呼ばれる人です。
確か、少女のヌードは美しいとかほざいていた様な気がします。
変態ですね。
人間としてのプライドというものは無いのでしょうか。

「可愛いね、そのセーラー服。」

男は朱奈に無視されている事に気づかず、荒い呼吸を続けています。
今、携帯を取り出し通報するか。それとも急所を攻撃し、殺すか。
真剣に朱奈は迷っていました。
外見だけにとらわれる大人とは、とても馬鹿馬鹿しいモノです。
内面を見れない、腐れきった大人の為に税金を使っているパトカーを
呼ぶか呼ばないか。そこがとても重要です。

「ねえ、聞いてる?」
「もしもし、警察の皆様でございましょーかぁ?」

でも、通報しちゃいました。何と、犯罪者でした。
こんなネタ的人生はもう嫌だわ、と朱奈は呟きました。



セーラー服とかメイド服とかナースとか獣耳とかに弱い大人に、
まともな人間はいるのだろうか…?と、朱奈は不安になりました。
まっとうな人生を送ろうと、彼女は考えました。






[ンデレラ −別話−]



「馬鹿ではないの?お母様。私、たった其れ如きにかかとを切り落とすような真似なんてしないわよ。
妹だって同じ、歩けなくなって城で暮らすより、ここで自分で稼いだお金で暮らした方がよっぽどいいわ。
サイズが合うのはシンデレラよ。さあシンデレラ、私のドレスを着て王子様に見せられる姿になっていらっしゃい。
小間使いの生活はもう終わりよ、よかったわね?シンデレラ。」

上の娘はきっぱりとそう母親に言い放ちました。妹はシンデレラが木に話しかけたり、 シンデレラの母親が邪悪な魔女だったことを知っていたので、姉の言葉に頷きました。
母親だって、本当の事はしっていたのですが、演技をしていたのです。 万一、シンデレラの持つ邪眼で殺されてはたまったものではありません。なので、いかにも悔しそうに演じました。
この3人、本当はとても頭がいい人達でした。シンデレラの母親が死んだ後も、 娘によって父親が苦しめられていることを知った為、助けようと来たのです。

帰ってきた父親は、シンデレラが居なくなりとても喜びました。 こうやって、本妻達は無事に家族で暮らせるようになったのです。木は埋め、鳩は売ってしまいました。
数週間後、妹が言いました。「シンデレラを妃にしたこの国は、もう長く持たないかしら?」と。
その言葉に全員が納得し、遠い国へと家族は引っ越しました。それから、ずっと4人は仲良く暮らしたそうです。



前に居た国が飢餓に襲われたり、妃が火炙りにされた事は、残念な事に彼らの耳に入ることは無かったそうです。
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