[空を笑って見上げて死にたい]



問題
あなたの死にたい方法をお教えください。
回答
空を笑って見上げて死にたい。

何時頃から私はこんな小難しいことを考えるようになったのだろうか。
私は何時もキーを叩いて自分が忘れてしまうであろう感情についてずっと記録を続けていたはずであると考える。
異常な人間に見られていたであろうとも思うが精神は決して異常じゃなかった。
私は人間としての当然の恐怖を持ち合わせそれを表していただけなのである。
私の行為について異常と言う者は居るだろう、けれども、その者は忘れてしまうという事に恐怖を持っていないのか?
いや、人間は忘れているという事に恐怖を感じる。
これから自分が感じるその物事を忘却してしまうことがとても恐怖になる。
だからこそ私はキーを叩いていた。ワードで記録出来ない程の感情を叩きつけていたのである。
けれども私は違うことを叩きつけるようになった。これは忘却することをどうでもいいと感じるようになったからか?
それとも、必要性があるからなのか?

[必要性があるなんて思えないけど、思ってみたりしてみたい]





[さあ行こうぜ鈍行列車地獄行き]



アンケート
我が社の列車を乗った感想をお答え下さい。
お客様意見欄
鈍行過ぎるんだよ、金返せ。

地獄行きと書かれた列車はあまりにも遅かった。
流れる町並みは、まるで運命に抗いたいと頑張っているかのように鈍い。遅い。
これ、本当に今日中に着くのか。オレの心配は続く。てーか何でオレは地獄に行こうとしているんだろう。
いやー、知ってるんだけどね?年一ぐらいで捕まる哀れでお頭の弱いお姫様回収大会。
もう飽きたよ、何やってんだろ俺。早く大好きな幼馴染にプロポーズして子供2人くらい作って、
ああ出来れば長女長男がいいなそれで幸せな老後生活を荒稼ぎした金でゆったり過ごしたいんだけどなあ。
お姫様?そんなの論外だよ。頭の弱い女より確りしている幼馴染のほうがいいだろ?
大体オレは萌えとかよーわからんし。もう誠実に!まともに!そんなのが好きだから。
ガクッ、と嫌な音がした。これから地獄に向かいまーすなんて聞こえてきやがった。
頑張るよオレ。頑張れよオレ。終わったら勇者なんて止めようなオレ。

[勇者だって結構疲れるし姫が好みってことはない]





[笑うしかないじゃないかこんな悲劇って]



Q1.あなたの生きがいは何ですか?
A1.ピアノを弾くこと。
A1.野球をすること。

ピアノが小さい頃からの友達だった。ピアノがあればそれで10時間は過ごせた。
ピアノで身を立てていくと決めていたし、ピアノと一緒に生きていくと決めてた。
だけど人生っていうのは残酷で、あたしはピアノとお別れをした。

利き手の小指が、少しだけ欠けてしまった。これだけでバイバイ。
手術したってもう元には戻れないの、キーが掴みきれないの。

「あはははははははは!」

さあ、どうしようかしら?
そんなとき、あたしはある男の子と出会った。



小さいころから野球が大好きで、テレビに齧りつくことが多かった。
住んでいた町に試合をしに来たら当然行った。
生で見る選手は皆かっこよくて、あんな風になりたいと野球チームに入った。
高校も野球が強いところに行こうと思って勉強も頑張ったし。
だからこんなこと、考えてもいなかった。

野球で、体が壊れるだなんて?

「やり過ぎは禁物ってか?やり過ぎないとプロにはなれないじゃないか!」

自暴自棄になっていた中学生活最後の冬に、
女と出会った。



「小指が欠けたぐらいで何だよ?俺は肩故障だぞ?」
「はんっ、ピアノはね、腕手首指全部揃って初めて弾くものなの。
神聖なものなんだから、こんな壊れた手で弾くわけにはいかない。」

あたしの右手の小指は、明らかに左手の小指より短い。
大半の人はわからない、と言うけれどその数センチ数ミリが大切なのよ。
メロディーが流れても急に戸惑う。今まで体に叩き込んできたリズムがずれる。
こんな手で触ったら、ピアノに失礼だ。掃除以外は触らないことにしてる。



コイツはお嬢さんだからこんなことにこだわるんだ。

「小指が欠けたぐらいで何だよ?俺は肩故障だぞ?」

アイツの指をよく見る。対して差はないし、わからないのだから大丈夫じゃないか。
壊れた俺の肩はどうなる?もう大好きな野球が出来ないってのに。

「はんっ、ピアノはね、腕手首指全部揃って初めて弾くものなの。
神聖なものなんだから、こんな壊れた手で弾くわけにはいかない。」

身勝手な主張だ、と思った。



「だからね、手を怪我をした人がピアノを弾いて感動的…っていうの大嫌い。
指が無いなんていう時点で指番号通りに弾けないんだから弾くな。
価値がない、っていうか、それだけを売りにするなって思う。」
「あー…それってさ、体壊した選手が無理して野球して負けてなんたらー。
ってのと一緒かな?虫唾が走るあのあれ。」
「話分かるじゃん、アンタ。」

汚さないで、あたしの元生き甲斐を。24時間だか27時間だか72時間だか知らないけど。
MG3マシンガンがあったらきっと打ってた。ドイツ好きだし。インドも。



「だからね、手を怪我をした人がピアノを弾いて感動的…っていうの大嫌い。
指が無いなんていう時点で指番号通りに弾けないんだから弾くな。
価値がない、っていうか、それだけを売りにするなって思う。」

コイツ、障害者を障がい者と書こうとかっていう運動でこう言うに違いない。
”何の保障も受けずに生活出来たらそう書いてやろうじゃない。”

「あー…それってさ、体壊した選手が無理して野球して負けてなんたらー。
ってのと一緒かな?虫唾が走るあのあれ。」
「話分かるじゃん、アンタ。」

まあ、俺もわかるっちゃわかるんだけど。

[出来損ないには触れてはいけない場所がある]





[新卒国語教師との戦い]



「ねえこのキノコって食べれるかな?」
「食べられる、ですよ先生。」

(教師がやってどうするら抜き言葉!)

「にゅうすい自殺?」
「いいえ、じゅうすい、ですよ。」

(知ってた?ってかお前教師だろ!)

「だから僕は言ったんだ、カンパツ入れずに…。」
「カン、ハツを入れず、ですが。」
「…え?君日本語大丈夫?」
「…カン、ハツを入れずに、と発音するんですよ。」

(知ってた?日本語って難しいよネ。)

「大変です先生、森おうがいが変換されませんこのパソコン。」
「字、間違ってるよ森鴎外だよ?」
「いいえ違います、そっちじゃないんです。」
「社会の先生ー!ちょっとこっち来て下さいー!」

(生徒の勝利。人名も難しいよネ。)

「ええと、本日はお日柄も宜しく皆様をお迎えできたことを心から…。」
「ようこそいらっしゃいました、でいいじゃないですか。
 そんなに硬く考えないでいいんですよ、アメリカからのお客さんだって。」
「えー、でもさあー…。」
「英語には謙譲語も尊敬語も敬語も無いんですって。
 だから無意味なんですよ、ほら、ようこそいらっしゃいました。」
「駄目でしょやっぱり。」
「アメ公に微妙な日本の感覚は伝わりませんって!大丈夫!」
「だってー…。」
「どうせ通訳さんはウェルカムしか言わない!」

[本当にウェルカムしか言いませんでしたとさ]





[ああ僕らの青春の日々よ]



「知ってる?斉藤、エロ本拾ってきたんだってー。」
「は?うわキモチワルイ。」
「朝倉、オトコはそう成長していくんだよ。」
「いや、何?つかいーたんもそーなわけ?」
「いーたんて戯言じゃねぇか!」
「井上壱夜ならいーたんで通るじゃない。」

朝倉さんと井上くんは私の前で楽しそうに会話していた。
斉藤くんは、男子の中で英雄扱いされている中二病の男の子だ。

「それは俺が人間失格ってことか?」
「うん。そーゆーことじゃない。」

うっかり笑ってしまった。
2人は私の方を見る、あ、忘れてた、って顔だった。
井上くんは微妙な顔になったけど、朝倉さんは笑っている。
朝倉さんはいい子だ。センスはダサいけど可愛い女の子だ。
太陽みたいに笑う。私はそれがとっても羨ましい。

「ナカさん、俺は人間失格ですか?」
「ナカちゃん、失格だよねー?」
「失格です。」

井上くんはへこんだ。地面にめり込まん勢いで土下座状態。
朝倉さんはやっぱり、かわいく笑う。
朝倉さんが着れば10年前の花柄ワンピースだって可愛い。

いいな、廊下での談笑。これってとっても青春みたい。
たとえ朝倉さんが幽霊で、井上くんが悪魔だとしても。
斉藤くんは天使で、私は自殺志願の人間だとしても。
これって、とっても青春って感じがする。

「何でナカさんは人間なんだろうねえ。」
「そだよねー、一緒に幽霊になろうよ。」
「お断りしておきます。」

[人間じゃなくても青春は出来るのさ!]
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